研究内容

本研究室は,旧広島文理科大学の時から一貫して隠花植物の分類学的研究と植物群落の生態学的研究を行ってきた.現在この豊富な研究資産を受け継ぎ,それを基礎として,新しい手法を用い,研究領域の拡大・発展をめざして研究活動を進めつつある.これまでに多数の先輩がこの研究室から巣立ち,日本各地で活発な研究・教育活動を行っている.研究内容の幅広いことが当講座の特徴であり,各々の分野で各自の個性を尊重した活発な研究を行うことができる.現在,当講座では藻類,菌類,地衣類,コケ(蘚苔)植物,シダ植物,種子植物に至るはば広い植物群についての研究を行っている.

研究テーマ

1. 植物の分類
1-1. コケ(蘚苔)植物の分類と生態
蘚苔植物の系統分類,植物地理,比較形態,生活史などの研究を進めている.蘚苔植物に関する文献と標本は日本の大学では随一であり,活発な研究活動を支えるものとなっている.伝統的手法による分類学的研究の他に,野外実験や培養・栽培実験等による生態学的な研究も行っている.最近は特に,走査型・透過型電子顕微鏡,共焦点レーザー顕微鏡ならびに蛍光抗体法を導入して,コケ植物を中心とする下等陸上植物の進化の道筋を,細胞分裂様式の多様性に着目して,あとづけてみようという試みを展開している.更に,DNA塩基配列に基づく分子系統学的研究として,フタマタゴケ目などの苔類やシラガゴケ科,ハイゴケ目,閉鎖果蘚類などの蘚類の系統関係について解析を進めている.また,酵素多型にもとづいた集団遺伝学的研究として,苔類ゼニゴケ目を材料に,生殖方法の違いが集団の分化に与える影響についての研究も進めている.

1-2. 藻類,地衣類および菌類の研究
蘚苔植物の他に,菌類,藻類および菌類と藻類の共生体である地衣類の分類学的研究が進められている.最近では,変形菌,樹皮着生藻類,土壌藻類,淡水産藻類,地衣類およびその共生藻等が研究対象となっている.藻類に関しては,単細胞や群体を形成する微細な種を対象として,培養による生活史の解明等から系統進化や種の多様性について研究している.地衣類に関しては,分類学的な研究の他に,菌類と藻類を分離培養して地衣体を再合成する研究をとおして,共生現象の研究も行っている.

2. 植物の生態

2-1. 植物群落の生態学的研究
森林,草原,湿原,路傍など様々な群落について,組成,構造,成立要因,動態等の研究を中心に行っている.

2-2. 植物の種生態学的研究
植物群落の研究と関連して,群落構成種の生態についての研究が行われており,野外で発見された現象を実験的に解明しようとしている.最近,植物の展葉や紅葉などの季節現象を定量的に測定する方法の開発に取り組んだ.


Counter: 2448, today: 1, yesterday: 1

Last-modified: 2024-04-30 09:48:29